多汗症について

多汗症治療のイメージ写真

多汗症は、エクリン汗腺からの発汗が著しく亢進してしまい、日常生活に支障をきたすほどの影響が生じている状態です。
この中には、全身にみられる全身性多汗症と、体の一部(手足や額、わき)に限定的にみられる局所性多汗症があります。
全身性多汗症としては、高温多湿の環境、運動時といった生理的に多汗であるというほかに高熱やバセドウ病、糖尿病などの疾患を発症している方、妊娠や肥満といったことも考えられます。
一方の局所性多汗症は情緒性発汗が多いとされ、精神的緊張によるものだったり、該当する局所が汗を掻きやすい体質であるのではないかと言われています。
いずれにしても、汗を大量に掻く理由がよくわからない場合は、その原因を探り、下表のような治療を行います。

多汗症の治療

  • 塩化アルミニウム外用
  • 水道水イオントフォレーシス療法
  • ボトックス治療
  • 内服抗コリン薬
  • 外用の抗コリン薬

塩化アルミニウム外用

塩化アルミニウムには、皮膚組織を収斂させる作用があります。
そのため、塩化アルミニウムを患部に塗布することにより、汗腺の穴を塞いで汗の量を減らすことができます。
塗り薬なので、手足やわきなどに限局して使用します。

ただし、刺激性が強いので、傷がある部位などへの使用は控えます。
皮膚がヒリヒリするようなときは使用を中止します。

水道水イオントフォレーシス療法

水道水イオントフォレーシス療法は、多汗症の部位(手のひら、足の裏 等)を水道水に浸し、微弱な電流(10~20mA)を通す治療法です。
これによって汗腺にダメージを与え、局所の汗を抑えるようになります。
患者様にもよりますが、通常は8~12回ほど治療を続けると効果が得られます。

副作用としては、ピリピリした痛み、発赤、小水疱などがあります。

ボトックス治療

ボトックス治療では、ボツリヌス菌が産生する毒素から抽出した成分を使用します。
ボツリヌス毒素はその名の通り、毒性が高いのですが、治療で使用する薬剤は毒性を除去しているので、安全に使用できます。

具体的には、皮下にこのボトックスを注射して、交感神経から汗腺への刺激の伝達をブロックすることで発汗を抑えます。
高い効果が期待できますが、その効果による持続期間は最大でも6ヵ月ほどなので、継続的に治療する必要があります。

副作用に関してですが、注射なので注入部位が赤くなる、内出血がみられることがあります。

内服抗コリン薬

内服抗コリン薬は、アセチルコリンの動きを抑制させるので、脳からの発汗指令を止めることができます。
他の治療法よりも即効性があり、通常は服用後1時間ほどで効果が得られます。
ただし、長時間の効果は期待できません。

なお、持病によっては使用できない事もあるので、事前に問診表にご記入いただき、担当医から必要事項を確認させていただきます。

外用の抗コリン薬

抗コリン薬には、内服薬だけでなく外用タイプもあります。
内服薬の場合は、抗コリン作用が全身に及びますが、外用薬ならば塗布した部位などに効果を限定させることができます。

保険適用のボトックス注射

多汗症の患者様のうち、「特別な原因がないのに日常生活に支障が生じるほど多くの腋汗が出ている」などの要件を満たしている場合は、保険適用のボトックス治療を受けることができます。
詳しくは当院までお気軽にお問い合わせください。

わきが(腋臭症)

わきが(腋臭症)は、単なる汗臭さとは異なり、つんと鼻につくようなにおいが特徴的です。
主な原因は、アポクリン腺という汗腺から出る汗にあります。
汗自体はそもそも無臭なのですが、アポクリン腺から出た汗に含まれる脂質やたんぱく質、糖質、アンモニアなどの成分が皮膚表面の常在菌により分解されることで、鼻につく独特のにおいが生じるのです。